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青嵐俳談

公開日:2026.05.29

[青嵐俳談]神野紗希選

 この春にアニメ化された松木いっかの漫画「日本三國」が面白い。核戦争による文明崩壊後の近未来、再び戦国の世となった日本の統一を目指す物語だが、智略を生かして泰平を目指す主人公を応援したくなるのは、現実の世が武力行使に傾くからか。現代のビルやモニュメントが荒廃した遺跡としてストーリーの背景に描かれるさまは、素朴な物語に没入しようとする私に、ここは今の世界の延長なのだと突きつける。

 【天】

回覧板凭るる甕の目高かな松山  小林浮草

 留守のときに来たのだろう、目高を飼う玄関先の甕に回覧板が立てかけてあった。ささやかな描写に暮らしの一場面がいきいきと見える。「凭るる」の動詞の確かさ。動く目高に視線が集約する感覚もリアルだ。

 【地】

岩山に涼しい瞼として花兵庫  西村柚紀

海亀に黎明の雨ぱつぱつと松山   川又夕

 柚紀さん、高原植物の涼しさ。岩山の瞼と思えば、ぱっちりと花の意志が輝く。夕さん、自然界の静謐。「ぱつぱつ」の擬音が甲羅にあたる雨を感じさせる。

 【人】

継ぎ接ぎに昼の組まれて水馬茨城   眩む凡

同棲や生成画像めく苺米国   爪太郎

 眩む凡さん、昼の予定の細切れの感覚を水馬が淡々とシームレスに繋いでゆく。爪太郎さん、あまりにきれいな苺に違和感。同棲にも虚像が紛れこむ、か。

 【入選】

安楽死めく薄明や風は麦へ愛知  唐沢うに

サバイバーズ・ギルト葉桜の無音八幡浜  福田春乃

アイリスと象の頭骨と向かい合う埼玉  東沖和季

流星や万の活字を拾ひ終え東温   堀雄貴

ストリートドラム薄暑の街を打つ松山   広瀬康

母の日やえんえんと降るパルメザン兵庫  石村まい

スクラップ記事に薄暑の糊の襞神奈川    ギル

すずらんがあなたと酷似してねむる松山 板尾奈々美

新緑やラムレーズンの塩微か大阪   ゲンジ

滝風や眼の消えさうな磨崖仏京都大院   武田歩

鈴蘭とソネットここは晴れる土地大阪 高遠みかみ

昼顔やうづまき菅を満たすみづ北海道  柏木七歩

凧どうしても僕たちに河が似合ふ愛媛大  野上翠葉

薫風や休み時間の飴甘し済美平成  川口心実

初夏の腕に食い込む参考書立命館大   乾岳人

片雲の風に誘われ食む鰆大洲   渡辺淀

マンゴーとろり時間に急かされるパフェで大分大院  鶴田侑己

土地を土地たらしめたるや闘牛は大洲  坂本梨帆

羊水の無重力なり雲の峰静岡 海沢ひかり

ばあちゃんの延長コード夏の居間兵庫    翔龍

短編のように花片舞っている松山西中等  松本奈々

薫風やオープン初日のパン屋あり松山   本田桜

 【嵐を呼ぶ一句】

金魚掬えず戦争に行くのは誰が静岡  東田早宵

 金魚すら掬えないのに、戦地で生き抜けるはずがない。それでも、ひとたび戦争になれば、誰かが兵にとられる。ひしめく金魚は運命を選択できない。民衆は戦争を拒否できるか。その岐路はすでに迫っている。

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