公開日:2026.01.16
[青嵐俳談]森川大和選
年始になると、卒業生の集まる同窓会に招かれることが増えた。3校の勤務校で3年生を9回ほど送り出した。成人式の前、大学卒業の前、高校卒業10年目。20歳過ぎれば酌み交わす。彼らのその後を聴くために。次は何の節目が増えようか。あと何度、卒業生を送り出せようか。今冬もまた、共に受験に挑む。
【天】
寒茜極夜のドアへかける指埼玉 東沖和季
冬に日の上らない「極夜」。両極点では約半年間にも及ぶ。今冬の最後の日が落ちる「寒茜」の眩むような赤さ。闇が来れば、オーロラ馳せる長い冬の始まり。「ドア」の外には自然の威。窓塞ぎ、火焚き、籠る。「指」に人間の意。厳しさへ臨む覚悟と矜持。
【地】
石積めば姉の熟寝へ冬の河和歌山 日塔朋記
静かな息遣いを保つ「姉」の美しき「熟寝(うまい)」の姿を見るうちに、生死の境を失う錯覚に陥る。その危うさばかりが気になり始める。賽の河原を行く姉とそれを追う自分の姿。夢か現か、不思議の一句。
【人】
黴餅をお悔やみ欄に包みけり秋田 吉行直人
ふきだしの如く七草粥の湯気松山 広瀬康
「黴餅」は菌糸が奥へ入る。句はやむなく捨てる仕種。「お悔やみ欄」で包むのは不謹慎だが、それほどに餅を悔やんでいるのには俳味がある。後者は「ふきだし」の新しさ。土鍋を開けたときの湯気の濃さ。人日の無病息災の願いが、言わずもがなに含蓄される。
【入選】
眼球に睫毛の影や雪催大阪 葉村直
天狼やカムイワッカを硫黄の香京都 ジン・ケンジ
鍵盤に触れてラになる冬の森愛媛大 江村結子
新しき街へ小春の認印大阪 辰巳電柱
送迎車は初雪を浴び療育へ大洲 坂本梨帆
校庭の阿弥陀籤めく雪まろげ松山 小林浮草
木星は軽く薬缶に冬の水京都大 水野不葎
春を待つベッドトーロンマンのごと熊本 夏風かをる
月冴ゆる夜や桃色の頭痛薬東京 桜鯛みわ
雑煮膳鬱小説のカギカッコ新居浜 羽藤れいな
毛糸編むわたしのつくる不均衡八幡浜 福田春乃
片っぽの靴下のまま冬銀河長野 野村斉藤
こんなにも分からぬ問ひを年の暮京都 宇鷹田
しはぶけば襖の山の絵の暮れぬ兵庫 石村まい
火の神の火の描きたる窯始愛知 紅紫あやめ
湯豆腐や眼鏡の多き吾が家系米国 爪太郎
春の土剥ぐ一面の電子基板愛知 唐沢うに
クリスマス終わって街は少し崩れ大分大院 鶴田侑己
トゥクトゥクや路地の小石に余寒立つ東京 岩本遥
【嵐を呼ぶ一句】
年越しは遠隔会議の最中に立命館大 乾岳人
オンラインで共有する私的な年越しカウントダウンを「遠隔会議」と言ったユーモア。待ちわびて話題も二転三転。まじめな話の途中に、その時を迎えたか。




